脱炭素ホットニュース
2025.01.21
サステナビリティ・リンク・ローンとは?

サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)は、借り手が設定した野心的なサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)の達成を奨励する融資形態です。具体的には、借り手のサステナビリティ目標とSPTsの関連性を整理し、重要業績評価指標(KPIs)で測定される適切なSPTsを設定します。これにより、サステナビリティの改善度合を評価・測定し、融資後のレポーティングを通じて透明性を確保します。つまり、KPIsは目標達成状況を測る指標であり、SPTsはその指標で達成すべき水準を意味します。
国内においては、グリーンファイナンスポータルにおいて、組成リストが公開されており、SPTsについての例も多く示されています。
主な特徴:
- 借り手がサステナビリティに関する野心的なSPTsに向けて行動し、その改善度合と融資条件が連動しています。
- グリーンローンとは異なり、調達資金の使途が特定のプロジェクトに限定されません。
- 融資後のレポーティングを通じて透明性が確保されます。
サステナビリティ・リンク・ローンのメリット:
借り手のメリット:
- サステナビリティ経営の高度化: SLLを活用することで、借り手はビジネス全体にとって野心的なSPTsを設定し、その達成に向けて強く動機付けられます。これにより、組織内のサステナビリティ戦略の立案・遂行、リスクマネジメント、ガバナンス体制の整備につながります。これは、TCFDなどのESG情報開示の要請に応える一助ともなります。また、これらの取り組みは中長期的なESG評価の向上や企業価値の向上に寄与します。さらに、KPIsの選択とSPTsの設定が野心的で信頼できるものであれば、競合他社との差別化にも役立ちます。
- 社会的支持の獲得: SLLによる資金調達を通じて、サステナビリティに関する野心的な目標に取り組んでいることや、環境・社会面で持続可能な経済活動の推進に積極的であることをアピールできます。これにより、社会的な支持を得られる可能性があります。
- 貸出条件におけるインセンティブ: 借り手のサステナビリティ・パフォーマンスの向上を促すため、SPTsに連動して金利が変動するなどのインセンティブが組み込まれている場合、借り手はサステナビリティ経営を高度化することで、ESG融資を好む金融機関から好条件で資金を調達できる可能性があります。
- 資金調達基盤の強化: SLLを受け、情報を開示することで、ESG融資を好む金融機関との新たな関係を築き、資金調達基盤の強化につながる可能性があります。
貸し手のメリット:
- ESG金融としての融資: SLLは、借り手のデフォルトなどがない限り安定的なキャッシュフローを得つつ、環境・社会面で持続可能な経済活動へ積極的に資金を供給し、それを支援していることをアピールできます。これにより、社会的な支持の獲得につながります。
- 経済的利益と環境・社会的メリットの両立: 貸し手は、SLLとして融資を行うことで、融資による利益を得ながら、持続可能な社会の実現に貢献できます。
- 借り手のサステナビリティ・パフォーマンス向上の動機付け: SLLとして融資を行うことで、借り手が貸出期間を通じてサステナビリティ経営を高度化するよう動機付け、持続可能な社会の実現に貢献できます。
- 借り手との深い対話(エンゲージメント): SPTsやサステナビリティ目標を通じて、借り手と事業課題について深く対話することで、借り手のニーズに合ったソリューションの提供など、多層的な関係構築・ビジネス機会の獲得につながります。
環境・社会面からのメリット:
- 地球環境の保全への貢献: SLLの普及が進むことで、借り手のサステナビリティ経営の高度化・維持が促進され、環境面で持続可能な経済活動への民間資金の導入が拡大します。これにより、温室効果ガスの削減や自然資本の劣化防止に寄与します。
- 金融機関に預託する個人の啓発: SLLの普及が進むことで、預金者への啓発につながり、個人の資産の受託者である金融機関がより積極的にSLLを行う動機付けとなります。
- 社会・経済問題の解決への貢献: SLLの普及を通じて、持続可能な社会の形成に資する経済活動の推進により、エネルギーコストの低減、地域活性化、災害時のレジリエンス向上に貢献します。
環境省認定制度脱炭素アドバイザー・アドバンスト資格であるJCNAカーボンニュートラルアドバイザー・アドバンスト資格を運営するJCNAでは、サステナビリティリンクローンの企業への理解を促進し、サステナビリティリンクローンを用いて企業が資金調達を行うことで脱炭素への投資が促進されることを推進したいと考えています。
JCNAでは、環境省認定制度脱炭素アドバイザー・アドバンスト資格であるJCNAカーボンニュートラルアドバイザー・アドバンスト資格の認定を開始しました。 本資格を取得することで、中小企業の脱炭素経営に必要な知識を得ることができます。 資格の詳細へ