脱炭素ホットニュース
地球温暖化対策計画の注目ポイント

2024年12月に環境省は、地球温暖化対策の推進に関する法律(通称温対法)に基づく、地球温暖化対策計画の案を発表しました。この計画は2021年以来の改訂となるもので、今後の地球温暖化対策の基本になるものです。
今回の要点
今回の地球温暖化対策計画は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロ(ネット・ゼロ)にすることを目標に掲げ、これを達成するための基本方針と具体的施策を明示しています。この計画は、パリ協定に基づいて策定され、世界の平均気温上昇を工業化以前より1.5℃以内に抑えることを目指しており、科学的知見に基づいた緊急的な行動が求められています。
計画の基本方針として、科学に裏付けられた政策の実行と経済成長の両立が強調されています。特に、地球温暖化対策を経済的な制約ではなく、むしろ新たな産業成長の機会と捉え、産業構造や社会の変革を促進することが重要とされています。また、日本は世界的な脱炭素化を牽引するリーダーシップを発揮することを目指し、国際的な協力と技術支援を通じて、他国と連携しながら地球温暖化対策を推進しています。
温室効果ガス削減の具体的な目標として、2030年までに2013年度比で46%の削減を目指し、さらに50%の高みを目指して挑戦を続けることが掲げられています。その後も段階的な削減を進め、2035年には60%、2040年には73%の削減を達成し、最終的には2050年までにネット・ゼロを実現する計画です。これらの目標達成に向けて、既存の技術を最大限活用しながら、新たな技術革新や社会的な取り組みが不可欠とされています。
この計画では、再生可能エネルギーと省エネルギーの推進が主要な柱となっています。具体的には、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの導入を加速させると同時に、省エネルギー性能の高い設備や機器の普及を促進する方針です。また、エネルギー効率を高めるための高度な管理システムの導入も推奨されています。産業部門では、電化や燃料転換、CCUS(炭素の回収・利用・貯留)技術の活用を進めることで、エネルギー消費の削減と排出量の低減を両立させることが目指されています。
さらに、国民一人ひとりの行動変容が求められており、家庭や運輸部門ではエネルギー効率の高い住宅設備や省エネ型の車両の導入が進められています。また、公共交通機関や自転車の利用促進など、日常生活における脱炭素型ライフスタイルへの移行も計画の重要な一環とされています。こうした取り組みは、地方公共団体や事業者との連携のもとで行われ、地域社会全体での協力体制が求められています。人材育成面では、脱炭素化推進に向けて適切な知識を備えた人材が企業の内外でその機能を発揮できるよう、要件を満たす民間資格を認定する「脱炭素アドバイザー資格制度」に基づく認定資格の地域金融機関等における取得を推進するとしています。
国際的には、JCM(二国間クレジット制度)を活用した技術支援やアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の活動を通じて、他国の排出削減を支援する役割を果たしています。また、COP28などの国際会議を通じて、1.5℃目標達成に向けた世界的な議論をリードし、削減目標の引き上げを促す取り組みが進められています。
これらの計画を実現するために、目標達成に向けた進捗を定期的に評価し、その結果をもとに施策の見直しや強化を行います。また、現時点での技術や制度に縛られず、将来を見据えた創造的な対策を導入する姿勢が求められています。
注目すべきポイント
環境省認定制度脱炭素アドバイザー・アドバンスト資格であるJCNAカーボンニュートラルアドバイザー・アドバンスト資格を運営するJCNAでは、今回の地球温暖化対策計画は、気候変動という地球規模の課題に対し、日本が積極的かつ戦略的に取り組む姿勢を示しており、その包括的な内容は非常に評価に値すると考えています。まず、2050年ネット・ゼロを目指す長期目標を明確に掲げることで、持続可能な未来への道筋を示した点は大変重要です。この目標は単なる宣言にとどまらず、具体的な削減目標を段階的に設定しているため、進捗管理や計画の実行可能性が担保されています。2030年、2035年、2040年という節目を設け、それぞれでの削減達成を目指す姿勢は、現実的かつ意欲的であり、実行力のある計画であることを物語っています。
また、この計画が科学的知見に基づいて策定されている点も大きな強みです。IPCC報告書などの最新の研究を踏まえ、1.5℃目標達成のために緊急的な行動が必要であることを具体的に示しています。科学に基づくアプローチは、温暖化対策において政策の信頼性を高める要素であり、国内外からの支持を得る基盤となるでしょう。
さらに、計画では経済成長との両立が強調されており、地球温暖化対策を産業構造の変革や新たな成長の原動力として位置付けています。脱炭素電源の拡大や省エネルギー技術の導入は、単に温室効果ガスを削減するだけでなく、日本経済の競争力を強化し、新たな産業や雇用を創出する可能性を秘めています。特に、再生可能エネルギーの導入やCCUS技術の活用といった施策は、気候変動問題への対応と経済成長を両立させるモデルケースとして注目に値します。
国際的な側面でも、日本がリーダーシップを発揮しようとしている点は非常に意義深いです。JCMやAZECなどの枠組みを通じた他国への技術支援や協力は、気候変動という共通課題において日本が世界と連携し、貢献する姿勢を示しています。このような取り組みは、日本の技術力をアピールする機会でもあり、国際社会における日本の地位をさらに向上させる可能性を秘めています。
さらに、国民一人ひとりや地方自治体、企業を巻き込む形で全社会的な取り組みを推進している点も評価すべきです。特に、脱炭素型ライフスタイルの促進や地域社会での協力体制の構築は、温暖化対策を身近な課題として認識させる重要なアプローチです。計画が具体的で実現可能性の高い施策を提示しているため、国民にとっても行動の指針となり得ます。
また、「脱炭素アドバイザー資格制度」が金融機関をはじめとした脱炭素経営に関わる人材育成制度として推進されることも明らかにされています。
全体として、地球温暖化対策計画は、温室効果ガスの排出削減と経済成長、国際貢献という多方面においてバランスが取れた内容であり、未来志向の取り組みとして大変意義深いものです。この計画を通じて、日本が地球温暖化対策の模範的な国としてさらなる役割を果たすことを期待しています。
JCNAでは、環境省認定制度脱炭素アドバイザー・アドバンスト資格であるJCNAカーボンニュートラルアドバイザー・アドバンスト資格の認定を開始しました。 本資格を取得することで、中小企業の脱炭素経営に必要な知識を得ることができます。 資格の詳細へ