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第7次エネルギー基本計画の注目ポイント

2024年12月経済産業省・資源エネルギー庁は「第7次エネルギー基本計画」の案を公表しました。JCNAでは注目ポイントをまとめました。
1. 福島第一原発事故の教訓を基にした政策
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故から13年が経過しましたが、事故の経験や教訓を踏まえた政策の推進がエネルギー政策の原点として引き続き重視されています。福島の復興・再生は政府の最重要課題として、現地での取り組みが進められています。
2. エネルギー情勢の変化への対応
第6次エネルギー基本計画策定以降、エネルギー情勢は急激に変化しています。ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化などにより経済安全保障の必要性が高まる一方、カーボンニュートラルを目指した国際的な動きが進展しています。こうした変化を考慮し、安定供給と脱炭素化の両立を目指すことが求められています。
3. S+3Eの原則の維持
エネルギー政策では「S+3E」(安全性、安全供給、経済効率性、環境適合性)の原則が引き続き重要視されています。特に安全性を大前提としながら、省エネルギーの推進や電化・非化石転換を進め、経済合理的な取り組みが強調されています。
4. 2040年に向けた政策の方向性
DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)の進展により電力需要が増加する中、脱炭素電源の確保が産業競争力に直結しています。再生可能エネルギーを主力電源化するとともに、特定の電源や燃料源への依存を避けたバランスの良い構成が提案されています。
5. 再生可能エネルギーの最大化
再生可能エネルギーの普及は、日本のエネルギー政策の中心です。特に地域共生と国民負担の抑制を図りながら、技術自給率の向上や次世代エネルギー技術の社会実装が推進されています。課題として、出力変動対応や使用済みパネルのリサイクルが挙げられており、各種制度の整備が進められています。
6. 原子力の役割と活用
原子力は安定供給性やコスト面での優位性を持ちつつも、安全性が大前提です。再稼働の加速、新型炉の開発、核燃料サイクルの確立などが進められています。一方で、国民の信頼確保や地域との共生が課題とされています。
7. 化石燃料の現実的なトランジション
現状では火力発電が電力供給の大部分を占めていますが、脱炭素化に向けた燃料転換や効率改善が進められています。水素やアンモニアを利用した火力発電の活用や、LNG(液化天然ガス)の長期契約の確保が検討されています。
8. 次世代エネルギー技術の確立
水素やバイオ燃料などの次世代エネルギーは、脱炭素化の鍵と位置付けられています。特に水素の供給拡大や価格低減に向けた政策支援が強化されています。
9. 国際協力の推進
エネルギー安全保障と経済成長、脱炭素化を同時に実現するため、国際協力が重要視されています。特に東南アジア諸国との協力が強調され、日本と同様の課題を共有する地域で現実的な脱炭素化を推進する取り組みが進められています。
10. 国民との双方向コミュニケーション
エネルギー政策は日常生活と密接に関わるため、国民が当事者意識を持つことが求められています。学校教育や透明性の高い情報公開を通じて、理解促進が進められています。
環境省認定制度脱炭素アドバイザー・アドバンスト資格であるJCNAカーボンニュートラルアドバイザー・アドバンスト資格を運営するJCNAでは、脱炭素を推進する立場から、第7次エネルギー計画について次のポイントを評価しています。
高く評価できる点
- エネルギー政策の基本方針として「安全性」「安定供給」「経済効率性」「環境適合性」をバランスよく追求するS+3Eの原則を維持している点は評価に値します。この原則は、エネルギー政策が複雑な国内外情勢に対応しながらも、安全性を最優先に置いていることを示しており、持続可能な社会の構築を目指す基本理念として重要です。
- 再生可能エネルギーを「主力電源」として最大限導入する方針を明示し、地域共生や国民負担の抑制に配慮した施策を打ち出しています。特に、次世代技術として注目されるペロブスカイト太陽電池の導入目標や、浮体式洋上風力発電の推進は、技術革新とエネルギー転換の両面で日本の競争力向上に寄与する可能性があります。また、地方自治体との連携を重視し、地域ごとの特性を活かしたエネルギー供給体制を築く姿勢も評価できます。
- 2050年カーボンニュートラル実現に向けた明確な目標が設定されており、電化や非化石燃料への転換が重視されています。特にエネルギー多消費産業への製造プロセス転換支援や、地域間連系線や蓄電池導入による電力供給の柔軟性確保など、具体的な取り組みが計画に盛り込まれています。こうした政策は産業競争力の維持と環境保全の両立を目指す点で評価されます。
- アジア地域との協力を進める「AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)」の枠組みを通じ、各国の事情に応じた多様な脱炭素化戦略を提案している点も注目に値します。このような国際的なリーダーシップを発揮する取り組みは、日本が世界の脱炭素化に貢献し、同時に自身の技術や政策を国際市場で展開する可能性を広げるものです。
- 水素やバイオ燃料などの次世代エネルギーを「脱炭素化の鍵」として位置付け、技術開発やサプライチェーンの整備を進める計画が示されています。これにより、国内外での競争力を強化し、将来的なコスト削減やエネルギー供給の多様化が期待されます。
課題点
一方で、下記の点は課題として挙げられます。
- 再生可能エネルギー導入の遅れ
再生可能エネルギーを主力電源化するとしながらも、2040年の目標が4~5割程度にとどまり、既に高い割合を達成している諸外国に比べて消極的です。また、地域共生や国民負担の抑制を強調していますが、出力変動対応や使用済みパネルのリサイクルなどの課題解決に向けた具体策が不透明です。 - 火力発電への依存とトランジションの課題
火力発電が依然として電力供給の中心を占めており、LNGや水素、アンモニアによる脱炭素化を目指していますが、技術的・経済的課題が多く、進展は限定的です。非効率な石炭火力削減が遅れていることも懸念されます。 - 国際協力の成果と国内政策のギャップ
アジア地域との協力を通じた脱炭素化が提案されていますが、それを国内政策にどう活かすかが不明確です。国際協力の具体的な効果が国内に還元されるかが注目されます。 - 国民の理解の不足
計画では国民との双方向コミュニケーションが重要とされていますが、具体的な取り組みは不足しています。学校教育や情報公開を通じた普及活動が必要とされますが、国民の当事者意識を高めるにはより広く国民の理解を求める必要があります。
JCNAでは民間の立場から、このような課題に対し、特に国民の理解を得るための普及・啓発活動に邁進して参りたいと考えています。
JCNAでは、環境省認定制度脱炭素アドバイザー・アドバンスト資格であるJCNAカーボンニュートラルアドバイザー・アドバンスト資格の認定を開始しました。 本資格を取得することで、中小企業の脱炭素経営に必要な知識を得ることができます。 資格の詳細へ