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2025.02.12

令和6年度「GX実現に向けた専門家ワーキンググループ」での検討について

令和6年度「GX実現に向けた専門家ワーキンググループ」での検討について

内閣府で行われている「GX実現に向けた専門家ワーキンググループ」が2024年12月までに10回開催されています。このワーキンググループでは、民間のGX投資の促進に特に力が入れられており、産業競争力を強化しつつ、脱炭素社会の実現を図っています。特に、GXを達成するための分野別投資戦略を策定し、長期的な視点で規制・制度改革と投資促進を組み合わせながら進めています。

1. 重点政策の概要

本ワーキンググループで議論されたGX政策の柱は、以下のとおりです。

(1) 分野別投資戦略

政府は、GX基本方針に基づき、22の重点分野を特定し、それぞれの分野において「道行き」を示しています。これにより、国内におけるGX市場の確立とサプライチェーンの革新を目指しています。主な対象分野として、以下のものがあります。

  • 素材産業(鉄鋼、化学、紙パルプ、セメント)
  • 自動車・船舶・航空機
  • 半導体・蓄電池
  • 水素・CCS(炭素回収・貯留)・次世代再エネルギー
  • 資源循環・くらしGX

(2) 投資促進策

GXを推進するために、政府は大規模な投資促進策を展開しています。基本的な原則として、以下の条件を満たす投資が支援の対象となります。

  1. 企業の経営革新にコミットし、技術革新性があること
  2. 産業競争力強化、経済成長、排出削減のいずれにも貢献すること
  3. 規制・制度と連携して投資を推進すること
  4. 国内の人的・物的投資拡大につながること

また、投資の類型として、以下の3つが設定されています。

  • A類型(技術革新を通じた研究開発投資)
  • B類型(設備投資による直接的な排出削減)
  • C類型(市場形成を目的とした需要側支援)

政府は、GX経済移行債を活用し、官民で150兆円超の投資を促進する計画です。

(3) カーボンプライシング(CP)の導入

政府は、GX実現のため、成長志向型カーボンプライシングを導入する予定です。これには、以下の施策が含まれます。

  • 排出量取引制度(ETS)の本格稼働(2026年度)
  • 化石燃料賦課金の導入(2028年度)
  • 有償オークション制度の導入(2033年度)

カーボンプライシングを導入することで、企業がGX関連製品・事業へ投資しやすい環境を整えます。

2. 分野別の具体的な政策

(1) 製造業

製造業は、日本のCO2排出量の約36%を占めており、GXの実現に向けて最も重点的に取り組むべき分野の一つです。政府は、以下の施策を推進しています。

鉄鋼

  • 大型電炉の導入と水素還元製鉄の研究開発
  • グリーンスチールの市場拡大
  • 設備投資補助とGX税制の導入

化学

  • ナフサ分解炉の燃料転換(アンモニア、バイオ燃料)
  • ケミカルリサイクルの推進
  • GX関連ビジネスの海外展開

紙パルプ・セメント

  • 石炭ボイラーから廃棄物ボイラーへの転換
  • カーボンリサイクル技術の拡大
  • 資源循環型産業へのシフト

(2) 自動車・運輸

運輸部門は、国内CO2排出量の約18%を占めており、GXの重要なターゲットとなっています。

自動車

  • EV・FCV(燃料電池車)の開発支援
  • 充電インフラの整備
  • 蓄電池の生産拡大と次世代技術開発

航空機・船舶

  • 持続可能な航空燃料(SAF)の供給拡大
  • 水素・アンモニア燃料を活用したゼロエミッション船の開発
  • 生産設備の導入支援

(3) エネルギー

日本のエネルギー政策の転換は、GX推進の根幹となります。

水素・CCS

  • 水素サプライチェーンの構築
  • CCSの事業環境整備
  • 水電解装置の生産拡大

次世代再生可能エネルギー

  • ペロブスカイト太陽電池の開発
  • 浮体式洋上風力発電の導入
  • 地熱発電の拡大

原子力

  • 次世代革新炉の開発
  • 高温ガス炉や高速炉の実証実験

(4) くらし・資源循環

家庭や業務部門も、GXの重要な要素となります。

  • 住宅の断熱性能向上(高効率給湯器・断熱窓の導入支援)
  • 資源循環型ビジネスの推進
  • 廃棄物リサイクルとCO2排出削減

3. 規制・制度による投資促進

政府は、GX推進のため、規制・制度改革も並行して進めています。

  • エネルギー供給構造高度化法によるSAFの供給目標設定
  • プラスチック資源循環促進法の強化
  • GXリーグを活用した企業間のルール形成

4. まとめ

政府のGX政策は、産業競争力の強化と脱炭素社会の実現を同時に達成することを目的としています。具体的には、以下の要素が組み合わさっています。

  • 分野別投資戦略による重点支援
  • GX経済移行債を活用した大規模な投資促進
  • カーボンプライシングの導入
  • 規制・制度改革による企業行動の変革

これらの政策により、日本は2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、国際競争力の維持・向上を図ります。企業の投資意欲を引き出し、新たな市場創造を促進することで、GXの実現を加速させる方針です。

環境省認定制度脱炭素アドバイザー・アドバンスト資格であるJCNAカーボンニュートラルアドバイザー・アドバンスト資格を運営するJCNAでは、「GX実現に向けた専門家ワーキンググループ」で議論された分野別の政策は、今後の企業の戦略構築の指針になりうるものである、と考えています。自社の分野に合わせて分野別政策をチェックすることをお勧めします。


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