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2025.03.17

第2次トランプ政権による日本の中小企業の脱炭素経営への影響

第2次トランプ政権による日本の中小企業の脱炭素経営への影響

はじめに

一般社団法人日本カーボンニュートラル協会(JCNA)は、日本の中小企業の脱炭素経営を支援する立場から、各国の環境政策の変化にも注視しています。第2次トランプ政権が気候変動対策に前向きではないことを踏まえ、2025年3月時点の情報をもとに、日本の中小企業の脱炭素経営がどのように変化するかを分析しました。


トランプ政権と気候変動対策

第1次トランプ政権では、パリ協定からの離脱や化石燃料の増産など、反気候変動政策を推進してきました。第2次トランプ政権でも、2025年1月の就任直後に、パリ協定からの離脱を宣言する大統領令を発出しました。さらに、EV関連の助成金の見直しや化石燃料の増産などの政策が打ち出されています。

しかし、これらの政策が世界の気候変動対策に与える影響は、限定的である可能性が高いと考えられます。その理由は以下のとおりです。

  • パリ協定からの正式な離脱には1年を要する
  • 気候変動枠組み条約(UNFCCC)からの離脱には米上院の承認が必要であり、実現は困難
  • バイデン政権が成立させた、主に気候変動対策とエネルギー政策を軸に据えた経済的・環境的な取り組みであるインフレ抑制法(IRA)の改正は、共和党が上院で60票を確保していないため困難
  • 全米24州の知事が参加する「United States Climate Alliance(米国気候同盟)」が、気候変動対策の継続を宣言 (参照)
  • GDPの74%を占める日政府の企業や団体の連合である「AMERICA IS ALL IN」も気候変動対策の継続を表明 (参照)
  • 石油価格の下落懸念から石油業界は増産に消極的 (参照)
  • 米国民の約7割が気候変動対策の必要性を認識している(2024年調査) (参照)
  • 第1次トランプ政権でも、米国以外の気候変動対策を阻害する政策はほとんどなかった

以上の理由から、第2次トランプ政権下では連邦政府の気候変動対策が後退する可能性が高いものの、世界の気候変動対策の流れが大きく変わるとは考えにくい状況です。


日本の中小企業の脱炭素経営への影響

日本の中小企業が特に注目すべきなのは、米国の政策動向よりも日本政府の方針です。指針となるのは、日本政府が2025年2月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」および「エネルギー基本計画」です。これについての詳細は、JCNAの関連ブログ記事をご参照ください。

日本の中小企業の脱炭素経営に関して、特に注目すべきポイントは以下のとおりです。

  • 日本政府は脱炭素電源へのシフトを加速
    • 2040年には再生可能エネルギーを4〜5割、原子力を2割程度にする目標を掲げています。
    • 再生可能エネルギー関連ビジネスの機会が拡大する一方で、エネルギー価格の大幅な低下は期待しにくいため、省エネルギーへの取り組みが不可欠です。
  • 中小企業向けの脱炭素施策を強化
    • 省エネルギー対策の推進
    • 省エネルギー診断の実施
    • エネルギー管理担当者向けの講習
    • 設備導入支援の拡充
    • 取引先企業との連携を強化し、バリューチェーン全体で排出削減を促進
  • 地域の金融機関・商工会議所・地方自治体と連携した支援体制の整備
    • 「知る」「測る」「減らす」の3段階で支援を行い、企業の排出量算定・公表を促進
    • 企業が脱炭素化計画を策定しやすい環境を整備
  • 先進的な温室効果ガス削減事例の共有とモデルケースの支援
    • 先進企業の取り組みを公表し、他の事業者が参考にできるような仕組みを構築
    • 環境デュー・ディリジェンス(環境リスク管理手法)の普及を推進
    • 企業のバリューチェーン全体での環境負荷低減の促進
    • ESG投資を見据えた脱炭素経営を支援

結論

第2次トランプ政権の政策が米国の気候変動対策に与える影響は限定的であり、日本の脱炭素政策の流れを大きく変えるものではありません。むしろ、日本政府の方針を踏まえた脱炭素経営の必要性は、今後さらに高まっていくと考えられます。中小企業は、政府の支援制度を活用しながら、省エネルギー対策を進め、持続可能な経営へとシフトしていくことが求められます。

環境省認定制度脱炭素アドバイザー・アドバンスト資格であるJCNAカーボンニュートラルアドバイザー・アドバンスト資格を運営するJCNAでは、 以上の見解のもとに中小企業の脱炭素経営をさらに推進するための人材育成をはじめとした事業をさらに推進していきたいと考えています。


JCNAでは、環境省認定制度脱炭素アドバイザー・アドバンスト資格であるJCNAカーボンニュートラルアドバイザー・アドバンスト資格の認定を開始しました。 本資格を取得することで、中小企業の脱炭素経営に必要な知識を得ることができます。 資格の詳細へ

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